- シニア調査
作成日:2025.08.29 最終更新日:2025.09.01
シニアの心を動かすヘルスケアマーケティングとは?|知っておくべき基礎知識と課題

健康志向の高まりを背景に、ヘルスケア市場は成長を続けています。特に、超高齢社会の日本において、シニア層の健康寿命を支えるビジネスは、社会貢献と事業成長を両立できる可能性を秘めています。
一方で、「シニア層に響くアプローチとは何か」「薬機法などの規制を守りつつ、いかに製品の価値を伝えるか」といった課題は、多くの担当者にとって共通の悩みではないでしょうか。 本記事では、ヘルスケア業界におけるシニアマーケティングの基礎知識から、課題・成功に向けたポイント・成功事例などを解説します。
目次
ヘルスケアマーケティングとは?
ヘルスケアマーケティングとは、健康食品やフィットネスサービスなどを通じて、人々の健康に関する悩みを解決し、より豊かな生活をサポートする幅広い活動を指します。単に商品を販売するだけでなく、顧客から「安心」や「信頼」を得ることが最終的な目標です。またヘルスケア分野は人の命に関わるため、薬機法などの法律を守り、科学的な根拠を示す必要があります。
ヘルスケアマーケティングで押さえるべき3つのポイント
ヘルスケアマーケティングでは、一般のマーケティングとは異なる独特の配慮が求められます。押さえるべき3つのポイントは、以下の通りです。
薬機法・景品表示法を遵守した表現
ヘルスケアマーケティングの基本は、薬機法と景品表示法という2つの法律を守ることです。薬機法では、「治る」「予防できる」など、医薬品と誤解されるような効果効能の表現が制限されています。また景品表示法では、科学的な根拠がないまま効果を謳ったり、根拠がなく「No.1」などと表示したりすると、優良誤認として規制の対象となり得ます。
違反した場合には、行政指導・課徴金の納付・刑事罰などの可能性があり、企業の社会的信用にも傷がつくこともあるでしょう。そのため、薬機法や景品表示法を遵守し、誤解を招かない言葉で情報発信をすることが大切です。
信頼の基盤となる「科学的根拠(エビデンス)」の提示
多くの消費者は、ヘルスケア商品について、「本当に効果があるの?」という疑問を抱くことが多いでしょう。そのような疑問に答えるため、科学的根拠(エビデンス)の提示が欠かせません。健康に関わる商品だからこそ、消費者は慎重に選びたいと考えており、曖昧な表現や根拠のない宣伝文句では信頼を得にくいでしょう。
エビデンスが不十分な商品は、消費者に「怪しい」「効果が疑わしい」という印象を与えやすく、購入を見送られるリスクが高まります。例えば、「〇〇大学との共同研究」や「〇〇の調査で効果を確認」といった具体的なデータがあれば、商品が信頼できるものであることを示す裏付けになります。
ブランドの生命線となる安心感を醸成
法律の遵守やエビデンスの提示が「信頼」の土台だとすれば、消費者が最終的に心を寄せるのは、ブランドが生み出す「安心感」です。特に健康意識の高いシニアは、「どのように作られているか」も重視する傾向にあります。「GMP認定工場での製造風景」や「原材料の生産者の顔」を見せるなど、品質管理の透明性をアピールすることが効果的です。
また、購入者のリアルな声や、商品開発者の思いを伝えるストーリーも、安心感を与える要素となり得ます。地道で誠実な取り組みの積み重ねが、消費者にとっての安心感となり、ブランドの生命線となるでしょう。
ヘルスケアマーケティングが重視される理由
ここでは、ヘルスケアマーケティングが重視される理由について解説します。主な内容は、以下の通りです。
シニア人口増で「シニアの巨大市場」が形成されている
日本は高齢社会に突入しており、シニア層の割合も増えています。シニアは、現役時代に蓄積した資産に加え、退職金や年金により安定した収入源を持つケースも多いでしょう。可処分所得に余裕がある人も多く、自分への投資を積極的に行う傾向にあります。
また、加齢によって、健康維持や改善に切実なニーズを抱える人も見受けられます。さらに、高血圧・関節痛・認知機能の低下など、健康に関する悩みも一人ひとり異なるため、細分化された提案が必要となるでしょう。したがって、単に「高齢者向け商品」を提供するのではなく、ターゲットに向けた的確な「マーケティングアプローチ」が欠かせません。
健康寿命延伸・QOL向上へのニーズが高まっている
医療費や介護費を抑制すべく、国としても、病気の予防やセルフケアを推進しています。また、日本人の寿命は延びており、できるだけ自立した生活を続けたいという「健康寿命」への関心が高まっています。このような背景から、健康食品やフィットネスなど、QOL(生活の質)向上に役立つヘルスケア関連の市場が拡大しています。
一方で同市場では、薬機法・景品表示法・医療広告ガイドラインなどの規制があり、一般的なマーケティング手法では対応しきれない部分もあるでしょう。消費者の健康に直結するため、科学的根拠に基づいた信頼性の高い情報発信も求められます。そのため、ヘルスケアに即したマーケティングが注目されています。
競争激化で、自社が選ばれるためにマーケティングが必須
ヘルスケア市場の成長にともない、ヘルスケア分野には、食品メーカー・IT企業・小売業など、様々な業種が次々と参入していることも事実です。さらに、スタートアップ企業も革新的な健康ソリューションを提供するなど、市場の競争はますます激しくなっています。競争が激化するヘルスケア市場において、消費者に選ばれるには、商品の機能性だけでは勝負できない可能性があります。
信頼性のアピール・適切な情報発信・顧客との関係づくりなど、多岐にわたる配慮も欠かせません。またヘルスケア分野は法規制が厳しく、専門知識に基づいた戦略的なマーケティングの知識も不可欠です。
ヘルスケアマーケティングで直面しがちな3つの課題
ヘルスケアマーケティングは、可能性を秘めた市場である一方で、他業界では見られない課題に直面することもあるでしょう。ここでは、ヘルスケアマーケティングで直面しがちな課題について、3つの内容を紹介します。
薬機法・景表法による広告規制
ヘルスケアマーケティングでは、薬機法・景表法などによって、表現が制限されています。なぜなら、健康や命に関わる商品・サービスを扱うため、健康被害や経済的損失が生じることを防ぐためです。「治る」といった直接的な表現だけでなく、「〇〇でお悩みの方へ」といった暗示的な表現からビフォーアフター写真の見せ方まで、許容範囲を判断するのは難しいのが実情です。
消費者の悩みを紹介したり、実体験の訴求をするケースも多かったりするため、意図せず法律違反となることもあるでしょう。判断を誤ると、行政処分だけでなく、会社の存続を左右する事態にもなりかねません。そのため、専門家と連携した厳格なチェック体制が不可欠です。
科学的根拠(エビデンス)の伝え方
ヘルスケアマーケティングで扱う商材は、健康や命に関わるものも多いです。そのため、消費者は製品・サービスの有効性や安全性に対し、敏感になる傾向にあります。消費者の不安を払拭するために、科学的根拠(エビデンス)を示しつつ、消費者の不安を払拭する必要もあるでしょう。
しかし、根拠となるエビデンスを用意するには、臨床試験や論文を作成するなど、多くの労力がかかることも事実です。また、取得したデータも、そのままでは一般の消費者に理解されにくいことがあります。そのため、統計データや研究結果をわかりやすい言葉に変換したり、「自分ごと」として感じられるストーリーに落とし込んだりする「翻訳力」も必要です。
多様化するシニア層へのアプローチ
シニアといっても、活動的なアクティブシニア層と介護が必要なケア層では、置かれている立場や状況が異なります。また「65歳から74歳の前期高齢者」と「75歳以上の後期高齢者」でも、価値観やニーズは異なるでしょう。そのため、細分化されたターゲット設定と、各ターゲットに最適化されたメッセージ発信やチャネル戦略が求められます。デジタルリテラシーの差や、メディアに接触する習慣の違いも考慮することが大切です。
またシニア本人だけでなく、購買の意思決定に関わる子ども世代(主に40代から60代)への訴求も踏まえる必要があります。
ヘルスケアマーケティング成功に向けたポイント
ヘルスケアマーケティングを成功させるために、意識すべきポイントがあります。主な内容は、以下の通りです。
市場を細分化し、ターゲットを明確にする
ヘルスケアのニーズは、年齢・性別・ライフスタイルなどによって異なります。例えば、「健康になりたい」という漠然としたターゲットのままでは、顧客の心に響くメッセージを届けにくいでしょう。「60代前半の女性で健康意識が高く、軽いひざの痛みに悩むものの、活動的に過ごしたい層」など、明確なターゲット設定が必要です。詳細なターゲット設定をし、明確にペルソナ設定することで、顧客に「自分のための商品・サービス」と感じてもらいやすくなります。
また、具体的なターゲット設定には、効果的な市場調査が欠かせません。定量的なアンケート調査で市場全体の傾向やニーズを把握しつつ、グループインタビューなどで、本音や課題を深掘りしましょう。
科学的根拠をデータで裏付ける
ヘルスケアマーケティングで扱う商品・サービスは、健康や身体に関するものだからこそ、信頼性が求められます。例えば、「個人の感想です」だけでは信頼を得にくいでしょう。また、科学的根拠のない情報を提供すると、顧客の不安や疑問につながりかねません。自社の商品やサービスを信頼してもらうには、「臨床試験データ」「学術論文」「第三者機関による検証結果」といったエビデンスを用いて、効果や安全性を科学的に裏付けることが大切です。また、薬機法などの規制遵守の観点からも、根拠のある訴求が求められます。
信頼できる情報発信チャネルを選ぶ
ヘルスケア分野では、誤情報が消費者の健康に影響を及ぼす可能性が高く、他の分野以上に「情報の信頼性」が重視されるでしょう。また、消費者は健康情報を得る際に、発信者の専門性や権威性も判断材料としています。そのため、「どこで発信されているか」といった情報元に注目する人も多いでしょう。自社の情報が信頼できることを示すためにも、「専門家が監修するメディア」「信頼性の高い情報サイト」など、適切なチャネル選びが欠かせません。信頼できるチャネルを通じた一貫性のある情報発信により、企業やブランド全体の信頼構築にもつながります。
一度きりで終わらせない「長期的な関係」を築く
ヘルスケアに関する商品・サービスは、効果を実感するまでに時間がかかることも多いでしょう。短期的な使用では、効果がわからないケースも多いです。そのため、継続して使ってもらうことが大切です。長く使用してもらうためには、購入後も利用者に寄り添う姿勢が欠かせません。「購入後のアフターフォロー」「定期的な情報発信」「使用方法のアドバイス」などを通じて、顧客との長期的な関係を築きましょう。
また、顧客の状態や満足度を定期的にフォローし、必要に応じて商品の見直しや追加提案を行えば、さらなる顧客満足度アップを実現できるでしょう。長期的な関係構築により、顧客生涯価値の向上やロイヤルカスタマーの育成(※いわゆるファン化)にもつながります。
【シニア向け】ヘルスケアマーケティングの成功事例を紹介
ここでは、シニアに向けた「ヘルスケアマーケティングの成功事例」を紹介します。2社の事例を紹介するので、成功ポイントを参考にしてみてください。
大手食品メーカーA社のひざ関節サプリメント
大手食品メーカーA社では、ひざ関節サプリメントを販売しています。しかし、ひざ関節に関するサプリメントは競合が多いため、数ある中から選んでもらう必要がありました。
そこでA社は、シニアの「活動的でいたい」という心を捉えられるよう、マーケティング施策を実行することにしました。新聞広告やテレビCMで具体的な悩みに訴求し、無料お試しキャンペーンを行うなど、利用のハードルを下げることに成功しました。電話対応・会報誌などを通じた長期的な関係構築も意識した結果、信頼感の醸成にもつながっています。
シニア女性専門のフィットネスクラブB社
従来のフィットネスクラブは若者や男性が多く、運動習慣のないシニア女性にとっては「人目が気になる」といったハードルがありました。そこでB社は、フィットネスクラブへのハードルを下げる施策を展開しました。
ターゲットを運動習慣のない中高年女性に絞り、「1回30分・予約不要・女性だけ」という独自コンセプトを打ち出しました。同時に、仲間とのコミュニケーションが生まれる「コミュニティ」としての価値も提供しました。「友人に会いに行く」という動機が生まれ、驚異的な継続率を実現しています。口コミ・紹介キャンペーンといった地域密着型の集客も、成功要因の1つといえるでしょう。
ヘルスケアマーケティングは「信頼」の積み重ねが重要
今後の日本では、シニア市場における「ヘルスケアビジネス」の成長が期待されています。しかし、健康によい商品やサービスを提供するだけでは、成功できるとはいえません。
シニア世代は、健康への関心が高い一方で、誇大広告や根拠のない情報に対して警戒心もあります。一度信頼を失ってしまうと、信頼を回復することは難しいでしょう。
そのため、薬機法などの法律遵守をはじめ、根拠のあるエビデンスを示すなどが信頼構築の第一歩となります。また「シニア」とひとまとめにせず、ターゲットを細分化し、それぞれのニーズを把握することで、個人に寄り添った信頼関係を築けるでしょう。
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